【Cure 病気・治療のおはなし】硝子体手術
眼球内にある硝子体を切除する手術。濁りや出血を除去するだけでなく、網膜疾患の治療・予防に効果的です。
01 眼球を形づくる硝子体を切除する治療法です。
硝子体とは眼球の内部を満たしている透明なゼリー状の組織のこと。主に眼球の形を保つ働きをしています。健康な硝子体は透明で、眼に入った光は、硝子体を通って網膜に到達し、映像として認識されます。この硝子体の切除を基本とする手術が硝子体手術です。
硝子体手術は、主に2つの目的で行われます。1つは、硝子体内部の透明性を回復する目的。加齢や病気によって生じた硝子体の濁りや出血を取り除き、視力の回復を図ります。2つ目は、網膜の病気を治療し、予防する目的。硝子体を切除して「網膜を引っ張る力」を緩めたり、不要な膜や炎症を取り除いたりすることで、網膜疾患を治療し進行を防ぎます。
02 眼球内に特殊な機器を入れて手術を行います。
硝子体手術は、通常、以下のような方法で行われます。まずは、麻酔。麻酔には局所麻酔と全身麻酔がありますが、硝子体手術では、眼の周辺に注射する局所麻酔が一般的です。麻酔が効いたら、白目に機器を入れるための小さな穴をあけます。穴は全部で3カ所です。術者はその穴から、硝子体を切除する機器、眼の形を保つための液体を流す機器、照明機器を挿入し、硝子体を除去していきます。その際、必要に応じて、不要な膜の除去やレーザー照射といった網膜に対する処置も並行して行います。疾患や状態によっては、流し入れた液体を最終的にガスやオイルと入れ換えることもあります。
また、若い患者さんを除き、硝子体手術を行う際は、基本的に白内障手術を同時に行います。その理由は、硝子体を切除すると、術後、白内障進行が早くなるためです。
【Message】幅広く地域のニーズに応える診療をめざしています。
硝子体手術は眼科診療のなかでも、高度な技術と経験を要する治療法です。当院では現在、名古屋大学から硝子体手術の経験豊富な医師を招き、緊急性のない硝子体出血や糖尿病性網膜症、黄斑上膜、黄斑円孔などに対する硝子体手術を行っています。医療機器や技術が進歩したため、以前に比べて、硝子体手術による体への負担は少なくなり、手術の安全性も向上しています。気になる症状がある方は、まずはお近くの眼科医へご相談ください。
また、当科では、硝子体手術だけではなく、子どもの弱視・斜視の診療にも力を入れており、まぶたや顔面の痙攣に対するボトックス注射などにも対応しています。今後も地域で発生する眼科ニーズに幅広く応えられるよう診療機能を高めていきたいと思います。