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更新日:2022年7月6日 613PV
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胃がんはステージにより、外科手術、内視鏡手術、薬物治療などを組み合わせて治療します。

発信者
  • 岐阜県総合医療センター 外科
執筆者
  • 長尾成敏
  • 岐阜県総合医療センター 外科・部長

キーワード

がんの治療は、ステージ(病期)、拡がり具合、転移しやすさなど、さまざまな角度から判断し、病状に適した治療を行います。手術、放射線療法、化学療法、免疫療法が、がんの四大療法と呼ばれ、がんのステージ、患者さんの全身状態、年齢、ご希望などを含めて検討し治療方法を決めていきます。
今回は、岐阜県総合医療センターで実施している胃がんに対しての各種治療法についてご紹介します。

早期胃がんに適した手術、進行胃がんに適した手術など、 各手術治療の特徴、メリットをご紹介。

胃がん治療においては、がんをすべて切り取ってしまうことができればそれに越したことはありませんので、まずは切除することから検討します。進行がんに適応される手術には開腹して行われる外科手術、早期胃がんには、傷口が小さく身体に負担の少ない(低侵襲の)腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡手術などが適応されます。より小さな病変であれば、低侵襲な内視鏡的粘膜切除術(ESD)で切除することができます。各種手術療法の特徴やメリットについてご説明します。

胃がんの手術治療の特徴とメリット

  • 内視鏡的粘膜切除術/ESD
    ・早期胃がんが対象になります。
    ・傷口が小さく身体に負担の少ない治療法です。
  • 外科手術
    ・進行がん、リンパ節転移が疑われるがんが対象になります。
    ・全身麻酔で行われる開腹手術です。
  • 腹腔鏡手術
    ・平成時代には早期の胃がんが対象でしたが、最近では進行胃がんにも治療効果があると認められています。
    ・傷口が小さく身体に負担の少ない治療法です。
  • ロボット支援腹腔鏡手術
    ・従来の腹腔鏡手術と比べ、合併症リスクが低減されます。
    ・より複雑な手術に対応します。

内視鏡的粘膜切除術/ESD

内視鏡的粘膜切除術(ESD)は 検査するときと同じように口から内視鏡を胃まで挿入し、内視鏡の中を通したワイヤーや電気メスでがんを切除する治療です。切除したがんを含む粘膜は、内視鏡鉗子でつかんで口から取り出します。
病理検査をし、がんの取り残しがないか、離れた場所に転移する確率はどれくらいかを判定します。
内視鏡的粘膜切除術(ESD)では切除できそうもない病変、あるいは内視鏡的粘膜切除術(ESD)後の病理検査で遺残や転移が予想される場合は外科手術となります。

外科手術

手術室で全身麻酔をかけて、お腹の中から胃と周辺組織(主にリンパ節)を切り取ってくる治療法です。
胃の下側 約2/3を切除する「幽門側胃切除」と上側約半分を切除する「噴門側胃切除術」、胃全部を切除する「胃全摘術」が代表的な手術です。

<リンパ節郭清>

胃がんはリンパ節転移しやすいがんです。胃だけを摘出しても転移したリンパ節が残ってしまうと再発することになります。昭和の時代から蓄積した膨大なデータをもとに、がんの場所や深さ病理型などから転移しやすいリンパ節を予想し、胃と一緒に摘出します。早期がんであれば、胃の周辺のリンパ節を摘出し、進行がんであればより離れたリンパ節まで摘出するようにしています。がんが手術で治るかどうかにかかわる重要な部分です。

腹腔鏡手術

お腹に5ヵ所程度の小さな穴(ポート)を開け、気体を送り込んでドーム状にふくらませ、カメラ入れてお腹の中をモニターで見ながら、ポートから道具を挿入して手術をする方法です。
開腹手術と比べ傷が小さく痛みが少ないため、この方法で手術したいところですが、がんの治療効果が開腹手術に劣らないか心配されていました。転移や再発のデータが集積されていなかった平成時代は、主に早期胃がんを対象に行われてきましたが、最近ではより進行したがんに対しても行って治療効果に問題がないといわれ始めており、より進行したがんに対しても行われつつあります。

ロボット支援腹腔鏡手術

お腹にポートという穴をあけて手術を行うという点では従来の腹腔鏡手術と同じですが、カメラや鉗子などの手術器具は術者が直接もつのではなく患者さんの脇に設置した機械(ロボット)が持ち、この機械を外科医がコントロールする手術です。現在日本ではダヴィンチという名称のシステムが多く普及しています。
従来の腹腔鏡手術では 鉗子がマジックハンドのように真っすぐな棒状のものの先がつまんだり切ったりできるようになった道具でした。動きに制限があるため、開腹手術の人の手のような動き方はできませんでした。ダヴィンチの鉗子はまるで手のようにいろんな方向に動くことができます。従来腹腔鏡手術ではできないところに手がまわるというメリットがあります。患者さんに優しい治療というより外科医に優しい治療といってもいいですが、それが合併症の少なさや、複雑な手術を達成できるとういう患者さんのメリットにつながっています。

時代とともに進化する胃がん治療

〜手術療法/薬物療法/免疫療法〜

昭和/平成前半の時代は 手術で広くたくさんの組織をとることでかなり進行したがんを治そうとしていました。まさに外科医の腕にかかっていました。拡大手術で治る人がいる一方で、リスクを伴ったり、後遺症が残るなどの問題もありました。 今では これまで蓄積されたデータからガイドラインが作成され、いきすぎた拡大手術は行われなくなりました。しかし現在でも拡大手術で奇跡的に治る人もなかにはいますので、条件がそろえば、拡大手術も必要と考えます。

がんは、広く散らばりやすい病気です。散らばったがんを手術ですべて切除することには限界があります。以下では、手術療法以外の治療法についてご説明します。

薬物療法/抗がん剤治療

抗がん剤による治療は、体中に薬がいきわたるため、手術で取り切れなかったがん細胞に対し効果があります。数多くの抗がん剤が開発され、平成の初期には抗がん剤で治ることは稀と思われていましたが、抗がん剤の開発が進むにつれ、抗がん剤で治る人も増えてきました。
化学療法と呼ばれるがん細胞一般を攻撃する薬が、従来よりありましたが、平成後期には分子標的薬といって、がん細胞が有する特定の遺伝子を狙って攻撃する薬が増えてきて、治療効果が高まってきました。

薬物療法/免疫療法

がん細胞を攻撃する役目を自らのリンパ球に行わせる方法です。がん細胞は、体細胞とは異なった遺伝子を持ち、構造が変わっています。本来ならこのような異物は免疫で排除されますが、一部のがん細胞は、隠れ蓑をかぶって免疫から逃れているものもあります。現在の免疫治療とは、隠れ蓑をとって自ら持つ免疫に攻撃させる仕組みの免疫治療です。

令和の現在、胃がんの治療は 切り取る治療、薬で治す治療、ともに数多くあり、がんの程度や患者さんの状態を鑑みて、より確率の高い方法がとれるようガイドラインが定められています。日本全国どこの医療機関にかかってもガイドラインから大きく外れるような治療はされていません。可能な治療 不可能な治療は医療機関によって違うと思いますが、病院と診療所、あるいは病院と病院が連携して、必要な治療はできるようになっています。日本は 世界の中で 胃癌を治すことには大変恵まれた国であると感じています。

※放射線治療は胃がんの治療のためには行いません。緩和ケアとして行うことはあります。

胃がんの手術治療のまとめ

今回は、手術療法を中心に胃がんの治療法についてご説明いたしました。最後にもう一度、各手術治療の特徴とメリットについて振り返ってみましょう。

胃がんの手術治療の特徴とメリット

  • 内視鏡的粘膜切除術/ESD
    ・早期胃がんが対象になります。
    ・傷口が小さく身体に負担の少ない治療法です。
  • 外科手術
    ・進行がん、リンパ節転移が疑われるがんが対象になります。
    ・全身麻酔で行われる開腹手術です。
  • 腹腔鏡手術
    ・平成時代には早期の胃がんが対象でしたが、最近では進行胃がんにも治療効果があると認められています。
    ・傷口が小さく身体に負担の少ない治療法です。
  • ロボット支援腹腔鏡手術
    ・従来の腹腔鏡手術と比べ、合併症リスクが低減されます。
    ・より複雑な手術に対応します。

岐阜県総合医療センターでは、外科、消化器内科、循環器内科など複数の診療科が協力して胃がん治療に取り組んでいます。まずは、かかりつけの先生に診ていただき専門的な検査や治療が必要と判断された際には、紹介状を持って当センターに来院ください。

画像提供:PIXTA