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更新日:2022年7月5日 404PV
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アトピー性皮膚炎の薬剤療法「プロアクティブ療法」

発信者
  • 岐阜県総合医療センター 皮膚科
執筆者
  • 永井美貴
  • 岐阜県総合医療センター 皮膚科・部長

キーワード

アトピー性皮膚炎は、湿疹やかゆみが慢性的に繰り返す、身体的にも精神的にも負担の大きい病気です。治療方法はその病態に応じて、①薬物療法 ②外用療法・スキンケア ③悪化因子の検索とその対策の3点が基本になります。いずれも重要です。薬物療法のなかで抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)を使用する際に、「プロアクティブ療法」という治療方法が重要視されています。塗り方を工夫することで、「症状の再発を防ぐ」「薬による副作用の軽減」「皮膚が良好な状態を維持できる」などのメリットがあります。
今回は、このプロアクティブ療法について、詳しく解説していきます。

皮膚炎の再発を防ぎ、良好な状態の維持が期待できる「プロアクティブ療法」

プロアクティブ療法は抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)を用いて行う薬物療法の一種で外用療法の工夫のひとつです。従来症状が悪化した際、その都度外用するアクティブ療法に対して、症状が改善してもその後、抗炎症外用剤を定期的に外用し、次第に減量・離脱をするプロアクティブ療法での外用の仕方が主流となっています。外用の仕方を工夫することで、抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の総量が抑えられることも分かっており、患者さまへのメリットが多いことで注目されている治療方法です。他の治療方法では望ましい成果が得られなかった患者さまでも、このプロアクティブ療法を行うことで症状が緩和されたという事例が多く報告されています。具体的なメリットは以下の通りです。

プロアクティブ療法のメリット

  • 皮膚炎の再発を未然に防止する
  • 抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の副作用のリスクが下がる
  • 皮膚が良好な状態を長期間維持できる
  • 抗炎症外用剤の使用を段階的に減量するために、最終的に保湿剤の塗布だけで皮膚を良好な状態に保つことが期待できる

プロアクティブ療法はアトピー性皮膚炎の正確な評価ができることが前提です。よってアトピー性皮膚炎の皮膚症状の評価に精通した医師によるか、あるいは皮膚症状の評価に精通した医師と連携して行われることが望ましいです。

なぜ症状が治まっていても抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)を塗り続けるのか

一見、皮膚炎が治まっていると見えても、その皮膚の下では、炎症がくすぶっていることが知られています。そのくすぶりこそが皮膚炎を再発させる要因となります。そのため、症状が治まってもある程度の期間、定期的に抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)を塗ることで、この軽微な炎症をしっかりコントロールできるからです。その結果、正常な皮膚の状態を維持することができます。

なぜ抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の副作用のリスクが下がるのか

これまでは、抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の副作用を考慮し、抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)は症状がひどい場合のみ使用して、症状が落ち着いているときには保湿やスキンケアを行うことが一般的でした。しかし、プロアクティブ療法を行うことで皮膚が正常な状態を長期間維持ができますので、その結果、皮膚炎が悪化するタイミングが減るために、結果的に抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の使用回数が減ります。よって、抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の副作用のリスクをも下げることができるからです。

プロアクティブ療法の安全性と治療の効果の信頼性

日本アレルギー学会と日本皮膚科学会が作成している『アトピー性皮膚炎ガイドライン(2021)』では、プロアクティブ療法は「比較的安全性の高い治療法」と言及されており、「1~3か月の集中的治療により十分な皮膚炎の改善が得られたことと、1年後の皮膚の状態が良好に維持されていることの間には有意な関連がある」という報告もあげられています。このことから、プロアクティブ療法の安全性や治療の効果は信頼できると言えるでしょう。

アトピー性皮膚炎に対するプロアクティブ療法のまとめ

今回はアトピー性皮膚炎の治療方法として注目されているプロアクティブ療法について解説してきました。最後にプロアクティブ療法の重要なポイントについておさらいしましょう。

プロアクティブ療法のポイント

  • 皮膚炎が出ていない時も抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)を塗ることで皮膚炎の再発を防ぐ
  • 症状の経過により、使用する抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の作用の強さや頻度を調整する
  • 結果的に抗炎症外用剤(ステロイド外用薬など)の使用回数が少なくなるため、副作用のリスクが下がる
  • 皮膚が良好な状態を長期間維持できる
  • 最終的には保湿剤の塗布だけで皮膚を良好な状態に維持できる

岐阜県総合医療センターでは、専門医が患者様の容態に応じて、プロアクティブ療法を含めた最適な治療が可能です。自分自身やお子様に湿疹やかゆみが繰り返すなどの症状があれば、まずはかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医から専門的な検査・治療が必要だと判断された際には、紹介状を持って当センターへお越しください。

画像提供:PIXTA