在宅療養中の患者さんを褥瘡(床ずれ)から守るための予防法とケア方法。
岐阜県総合医療センターには、皮膚・排泄ケア認定看護師が在籍しています。皮膚・排泄ケア認定看護師は、人工肛門を造設した人へのケアや、褥瘡(じょくそう)と呼ばれる床ずれの予防やケアの専門知識を持った看護師です。今回は、在宅療養中の患者さんや家族の方向けに、褥瘡(床ずれ)の予防やケアについてわかりやすくお話します。
褥瘡(床ずれ)とは?
褥瘡(床ずれ)とは、布団や車椅子の座面などと接する皮膚が長時間圧迫されたり、こすれたりすることが原因でできる傷のことです。皮膚や皮下組織、筋肉への血流が滞ったり、栄養が行き渡らなくなり壊死した状態をいいます。
重症の場合は、治療に数カ月〜数年かかるケースもあります。そのため予防はもちろん早期発見・早期治療が大切になります。在宅療養中に気になる症状が現れたときには、訪問看護師等に相談して医師や皮膚・排泄ケア認定看護師につないでもらいましょう。
褥瘡(床ずれ)ができやすい場所や原因は?
褥瘡(床ずれ)ができやすい場所は、圧迫が加わる場所です。また、電動ベッドでは、上半身を上げることによって、身体とベッドにずれが生じることがあります。その際に加わる力が皮膚をこすり、皮膚が巻き込まれたり引っ張られたりして褥瘡(床ずれ)ができます。お尻の中央部分の骨の出っ張ったところ(仙骨部・尾骨部)、かかと、背骨の湾曲部分などが褥瘡(床ずれ)ができやすい場所です。
また、栄養が不足している状態だと脂肪や筋肉が減り、骨が出っ張ってきます。そうなると、より圧迫やずれの力がかかりやすくなり褥瘡(床ずれ)になってしまいやすいです。私たちの身体は、傷ができても自分で回復する力がありますが、栄養が足りないとその力が発揮できません。
褥瘡(床ずれ)の予防方法
褥瘡(床ずれ)の予防方法と予防に利用できる道具をご紹介します。
① 圧迫対策
自分で身体を動かせない方は、床ずれ予防のエアーマットレスを使用すると良いでしょう。身体の重さが分散されるようなつくりになっています。また、自分で寝返りができる方で、背骨やお尻の骨が出ている方は、突起した部分に圧迫がかかりやすいので、体圧を分散する床ずれ予防マットレス(ウレタンマットレス)を利用することをおすすめします。
② ずれ対策
介助時のずれを予防するには、身体の滑りを良くするシート(スライディングシート)を敷いたり、介助者が滑りやすい手袋を使用することも有効です。また、おむつ交換時には特に注意が必要です。尿とりパッドを引っ張り出す際に、お尻の骨の出っ張りや皮膚に摩擦がかかります。可能な限り骨や皮膚への摩擦を避けるように努めましょう。
③ 寝たきり予防対策
自分で動いたり起き上がったりできなくなると、身体の機能が落ちてきて、床ずれがきやすい状態となります。毎日ラジオ体操をしたり散歩をしたりするなど、無理のない運動を行うと良いでしょう。一度にたくさん動くよりも毎日少しずつ続け身体機能の維持に努めましょう。
④ 栄養補給
年齢が上がると食事の量が少なくなる傾向があります。効率よくバランスが取れた栄養が摂れているか確認しましょう。特に褥瘡(床ずれ)対策にはタンパク質の摂取が大切です。
⑤ むれ対策
失禁がある場合、皮膚がふやけやすくなります。状態に適したオムツやパッドなどを使用しましょう。
こんなときには相談を
次のような症状があるときには、かかりつけ医や皮膚・排泄ケア認定看護師に相談してください。
●お尻など、ベッドや車椅子に接する部分の皮膚が赤くなり、時間がたっても赤みが消えない
●ベッドや車椅子に接する部分の皮膚がむけた
●皮膚の赤い部分をつまむと皮膚の下が硬くなっている
●最近ほとんど動かなくなった
●最近食べる量や飲む量が減ってきた
●お尻などにかさぶたがあり高熱が出ている
岐阜県総合医療センターでは、皮膚・排泄ケア認定看護師による「スキンケア外来」を実施しています。褥瘡(床ずれ)の予防や傷のケア・排泄物による臀部・陰部のかぶれなど皮膚に関する全般的なケアを行います。詳しくは下記をご確認ください。
参考文献・出典
■日本褥瘡学会「床ずれ予防パンフレット」
画像提供:PIXTA