中日新聞LINKED 地域医療ソーシャルNEWS
WEBマガジン

サイト内検索

〒500-8717 岐阜県岐阜市野一色4-6-1
TEL:058-246-1111
Beyondキャンペーン
地域の中でのケアサイクルを支えよう
  • 療養生活

産後うつに悩む母親・妊産婦・ご家族を地域と連携して支えます。

岐阜県総合医療センターでは、総合周産期母子医療センター(※)として、多胎妊娠や合併症妊娠、早産などの方々に対して医療を提供しています。正常分娩以外にも帝王切開や吸引分娩などの医療的サポートが必要な分娩を含め年間約600件の分娩を行っています。たくさんの妊産婦さんの中には産後うつを患う方もおり、多職種連携や地域連携によってその方々を継続的に支えています。産後うつとはどんな病気なのか、私たち岐阜県総合医療センターが、地域と協力してどのようにサポートしているかをご紹介します。

(※)母体・胎児集中治療室(MFICU)や新生時集中治療室(NICU)などを備え、多胎妊娠、合併症妊娠、重い妊娠高血圧症候群、切迫早産など、母児のリスクの高い妊娠に対応できる病院。

産後うつとはどんな病気?

産後うつは、出産後から2週間を超えて持続し、日常生活動作を妨げるような抑うつ症状を起こします。産後の女性の10-15%前後に産後うつが見られます。産後うつの症状には、次のようなものがあります。

●疲労感・不眠
●不安・緊張
●イライラする
●希望が持てない
●集中力や記憶力が弱くなる
●興味に欠ける
●自分を責める・情けなく思う
●食欲がなくなる
●この世から消えてしまいたいと思う

産後うつの原因は?

現在のところ、産後うつの原因はっきりと分かっていません。しかし、妊娠中と産後は身体的に劇的な変化がある時期で、心理的・社会的にも適応することが難しいのです。現在では、感情をコントロールする脳の神経伝達物質やホルモンの変化、環境などが関連しているのではないかと考えられており、研究が進められています。

産後うつとマタニティブルーズとの違いは?

マタニティブルーズとは、産後数日後に感じる気分の変化(気分の落ち込みや不安など)で、数日から1〜2週間で自然になくなる生理的な変化です。一方、産後うつは、上記の症状が変動的に現れます。気分が良い日もあれば悪い日もあるというように症状が変化しやすいことも特徴です。

産後うつにならないために気をつけることは?

妊娠中・産後のうつ病を引き起こす要素は、ストレスを感じやすい時期である上に、周囲のサポートが十分ではない場合が考えられます。また、妊娠・出産に伴うホルモンの変化は、脳がストレスに耐える抵抗力を低下させると考えられています。そうすると、物事を悪い方へと捉えてしまう傾向が強くなるのです。

「育児は自分がやらないと」と考えて無理をすると、悪循環に陥って産後うつ病になってしまうことも考えられます。産後うつにならないために、また悪化させないためには、このような妊娠・産後の特徴を知り、本人は周りの人と共に育児を行い、家族は母親のサポートができる態勢を整えることが大切です。

産後うつになったらすべきことは?

「うつ症状があるかな」「いつもの自分(妻・娘)と違う」など、本人や夫、家族が気がつくことがあるかもしれません。そのときには、本人の話をよく聞いて、育児や家事などをサポートできるといいですね。そして、家族の誰かが本人に付き添って受診しましょう。

岐阜県総合医療センターの産後うつサポート

当院で出産される予定の方や出産された方を対象に、次のような体制で産後のサポートを行っています。心配事がありましたら、遠慮なくお知らせください。

●妊娠期・退院前・2週間健診・1カ月健診のときに産後うつ病に関するアンケートを行っています。

●2週間健診の際には、助産師による授乳状況の確認や産後や育児に関する質問などをお受けしてアドバイスを差し上げています。

●小児科医による赤ちゃんの1カ月健診の際には、助産師も立ち会い母子ともにサポートできるように努めています。

●必要に応じて、産科医、助産師、臨床心理士、メディカルソーシャルワーカー等が母親に面接して適切なサポートを実施しています。例えば、助産師や臨床心理士の面談、カウンセリングなども行っており、専門医の診察が必要な場合は受診の段取りを行っています。

●岐阜県総合医療センターでの1カ月健診以降も継続した支援を必要とする方には、各自治体の母子健康包括支援センターなどに引き継ぎを行い、切れ目のない支援ができるよう努めています。


参考文献・出典
e-ヘルスネット(厚生労働省)

画像提供:PIXTA