狭心症が疑われたら専門的な検査と治療を受けましょう。
胸部はもちろん、背中や肩、腕、あごなどに痛みを感じるようであれば、狭心症の疑いがあります。早めにかかりつけ医を受診し、循環器内科のある病院で検査を受けるようにしましょう。
狭心症の主な検査は?
症状や心電図の異常から狭心症が疑われる場合、より専門的な検査を行います。岐阜県総合医療センターでは、症状に応じて下記の検査を組み合わせて行い、正しく診断しています。
■負荷心筋シンチグラフィ
心筋シンチグラフィは、静脈に放射性同位元素を注射し、放出される放射線を撮影して、心筋の血流などを調べる検査です。心臓の状態が安定している場合は、運動や薬剤で心筋に負荷をかけて行う「負荷心筋シンチグラフィ」を行います。
■冠動脈造影3D CT検査
静脈内に造影剤を投与し、X線を利用して冠動脈(心臓の血管)を撮影。その画像を3D処理して、血管が狭くなっているところを詳しく見ます。これまで心臓カテーテル検査でしかわからなかったような鮮明な画像が、体に負担の少ないCT検査で得られるようになりました。
■心臓カテーテル検査
最終的に心臓カテーテル検査をして、治療法を検討します。これは、足や腕の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、レントゲンで確認しながら冠動脈に造影剤を注入して、血管の狭窄の程度や部位を調べる検査です。
■冠動脈血流予備能比(FFR)の測定
冠動脈血流予備能比は、冠動脈の狭窄によってどのくらい血流が阻害されているかを推測する指標です。この指標によって、経皮的冠動脈インターベンションなどの積極的な治療が必要かどうかを判断します。
狭心症の治療は、生活習慣の改善から。
狭心症と診断がついたら、動脈硬化の進行を遅らせるために、高血圧や高脂血症などの生活習慣病の改善をめざします。具体的には、塩分や脂肪、炭水化物をとりすぎない食事、ウォーキングなどの運動、減量などを心がけます。禁煙も不可欠です。
狭心症の主な薬物療法は?
治療の目的に応じて、さまざまな狭心症の薬があります。
■狭心症発作を鎮める薬
発作が起きたときは、「硝酸薬(ニトログリセリンなど)」を口に含み、舌の下で溶かします。
■狭心症発作を予防する薬
交感神経の緊張を和らげ、心筋の酸素需要を抑える「ベータ遮断薬」、血管を拡張させ、心筋への酸素供給を増やす「カルシウム拮抗薬」などを服用します。
■冠動脈閉塞を予防、解消する薬
血圧を低下させ、心臓が血液を送り出すための仕事量を減らす「アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬」「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」などを服用します。
重症の狭心症には経皮的冠動脈インターベンション。
冠動脈の血管が非常に細く、血流がかなり阻害されている場合、カテーテルを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI、PTCA)を行います。
この治療は、心臓カテーテル検査と同様、足や腕の血管からカテーテルを挿入し、冠動脈の血管が狭くなったところまで運びます。カテーテルの先端につけたバルーンを膨らませて血管を広げ、血管内にステント(筒状の器具)を留置することで、血行を改善させます。
また、症状などによっては、胸を開いて、詰まった冠動脈の先に迂回路(バイパス)をつくる「冠動脈バイパス手術」を行う場合もあります。
手技の安全性を高める血管内超音波検査や光干渉断層法。
岐阜県総合医療センターでは、冠動脈インターベンションの安全性を高めるために、治療中に血管内超音波検査(IVUS)を行っています。これは、超音波送受信装置を搭載したカテーテルを挿入し、血管内部の断層画像をリアルタイムに確認し、精緻な手技をサポートするものです。
さらに、複雑な病変の場合は、光干渉断層法(OCT)や血管内視鏡で病変を観察し、最適な治療法を選択しています。光干渉断層法は、血管内超音波検査よりも高い解像度で病変を観察できる検査です。
退院後も、生活習慣病の改善を心がけて。
経皮的冠動脈インターベンションで発作が起きないようになれば、狭心症の治療はいったんうまくいったといえます。しかし、油断は禁物です。動脈硬化が進めば、狭心症を再発する恐れがあります。退院後は、処方された薬を正しく服用すると同時に、動脈硬化がこれ以上進行しないように、食事や運動など生活習慣の改善を心がけることが大切です。
参考文献・出典
■日本心臓財団「狭心症とは」
■狭心症・日本臨床内科医会
■MSDマニュアル家庭版「狭心症」
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