【私たちの治療】胸腔鏡手術(VATS:バッツ)
肺がんや自然気胸などに対し、体に負担の少ない手術を行っています。
01 傷口が小さいため痛みが少なく回復も早い手術方法。
胸腔鏡手術は胸部の皮膚を数カ所小さく切って、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間から胸腔鏡や手術器具を挿入。カメラで映し出された胸の中の映像を見ながら行う手術です。略してVATS(バッツ)といいますが、これはvideo-assisted thoracic surgery(ビデオ補助下胸腔鏡手術)の頭文字を取った略語です。
胸腔鏡手術が適用されるのは、肺がん、縦隔腫瘍、自然気胸など呼吸器外科手術全般にわたります。この手術の利点は、傷口が小さいため痛みが少なく、体への負担を抑えられるところ。たとえば肺がんは以前、胸部を大きく切開して行う開胸手術が一般的でしたが、今は胸腔鏡手術が標準治療になってきています。
02 早期の肺がんに胸腔鏡手術を積極的に採用。
胸腔鏡手術には、モニターだけを見ながら手術する完全胸腔鏡下手術と、胸腔鏡を挿入してモニターを見つつ、胸部を小さく切開して直接目でも確認しながら肺切除を行うハイブリッド手術があります。
当院では、これらの術式を積極的に行うことにより、体に負担の少ない治療を実現しています。データによると、2009~2022年に行ったほとんどの肺がん手術は胸腔鏡を使用して行っており、良好な手術成績をあげています。また、術後の入院期間も3~7日間程度に短縮しています。なお、胸腔鏡手術は優れた手術法ですが、肺がんの進行度や患者さんの状態によっては、安全性・根治性を優先して開胸手術を選択しています。
【Message】肺がんは早期に見つかれば、負担の少ない手術ができます。
胸腔鏡手術は肺がん手術のアプローチ方法ですが、同時に、切除範囲も重要なポイントです。肺がんの手術では、がんのある肺葉を全部切除するため、手術後に呼吸機能が低下してしまいます。そのため当院では画像を詳細に検討して、呼吸機能を温存する〈縮小手術(区域切除、楔状切除)〉を積極的に取り入れています。縮小手術をすることにより、息苦しさが少なくなり、QOL(生活の質)を高く保つことが期待できます。
但し、これらの手術を適用できるのは、早期の肺がんに限定されます。肺がんは、がん検診や人間ドックのCT検査で発見されることも多くありますから、日頃から健康チェックを心がけていただきたいと思います。