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【小児腎臓病】子どもの急性糸球体腎炎。検査と治療の流れ。

溶連菌感染症になったお子さんが、その後「顔や手のむくみ」や「肉眼で確認できるような血尿」を発症した場合、急性糸球体腎炎の可能性があります。できるだけ早く専門的な医療機関で検査と治療を受けましょう。

基本的な検査は、尿検査と血液検査です。

急性糸球体腎炎は、基本的に医師による診察と尿検査、血液検査で診断可能です。ただし、他の腎臓病と見分けるなどのために、腎生検(※)を実施することもあります。
※腎臓の組織を細い針で採取し、顕微鏡で検察する検査。

■診察
直接患者さんを診察し、「むくみや目に見える血尿、尿量の減少、高血圧などの症状があるか」、「過去に腎臓病や高血圧などを患ったことがあるか」、「1〜2週間前に発熱やのどの痛みなどの症状があったか」などを確認します。

■尿検査
尿検査では主に、「血尿」と「タンパク尿」の有無を確認します。程度の差はあれ、急性糸球体腎炎では、ほぼすべての患者さんに血尿が見られ、尿からタンパクが検出されるケースも多いです。

■血液検査
血液検査では、血清クレアチニン値などで腎臓の機能が低下していないかを調べるとともに、溶連菌の抗体検査(ASOやASKなど)を行い、溶連菌の感染があったかどうかを確認します。

■腎生検
診察や尿検査、血液検査だけでは診断を確定できない場合や、急性糸球体腎炎とは合わない経過を示す場合などに行います。ほかの検査に比べて体への負担は少し大きいですが、糸球体腎炎を診断するうえでは最も正確かつ確実な検査方法です。

急性糸球体腎炎の治療法とは?

急性糸球体腎炎には、特別な治療法や治療薬はありません。基本的に、安静にしながら食事制限や対症療法(※)を続ければ、自然に治ります。治療は通院しながら自宅で行うことも可能ですが、むくみや高血圧、尿量の低下などの症状が出ている場合には、1〜2週間程度入院して病状をコントロールすることをお勧めします。
※原因そのものを取り除くのではなく、あらわれた症状を軽減するために行われる治療法。

■食事制限
むくみや尿量の低下、高血圧などの症状がある場合、患者さんの状態に合わせて、塩分制限(年長児で1日3g程度)や水分制限、たんぱく質の制限を行います。症状が軽くなれば、それに合わせて少しずつ食事制限も解除されます。

■対症療法
症状が強く、食事制限だけでは充分にコントロールできない場合には、利尿薬を使って水分を体外に排出したり、降圧薬で血圧を抑えたりします。

■原因となった感染症の治療
感染症が治りきる前に急性糸球体腎炎を発症した場合、腎機能への影響を考慮しながら、抗生物質などを使って感染症の治療を並行することも大切です。

治療の結果、むくみや尿量、血圧などが改善すれば、日常生活の制限や薬の服用は必要なくなります。ほとんどの場合は腎機能障害などの後遺症も残らないので、元どおり、元気に幼稚園や小学校に通う生活に戻ることが可能です。

小児腎臓内科を開設しています。

急性糸球体腎炎をはじめとする小児の腎臓病を診療するには、「小児科としての視点」と「腎臓内科としての視点」の2つが必要になります。岐阜県総合医療センターでは、診療科の1つとして小児腎臓内科を開設し、「日本小児科学会専門医」と「日本腎臓学会専門医」の両方の資格を持つ医師を中心に、小児の腎臓病に対して専門的な診療を提供しています。もちろん腎生検も可能ですので、お子さんに気になる症状がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

一般社団法人 日本腎臓病学会 「急性糸球体腎炎」
公益財団法人 母子健康協会 「幼稚園・保育園に通う年齢のこどもの腎臓病」
岐阜県総合医療センター 「小児腎臓内科」

画像提供:PIXTA